莉緒は友を呼ぶ
脚本家
ichi_cho_London
投稿日時
2018-05-26 15:31:26

百瀬莉緒

ーアイドルになるわ。

そう言われた時、耳を疑った。

大学での初めての授業で、隣に座ってきて。それから仲良くなったのが運の尽き。とにかく世話が大変だった。

姉御気取りで、頼みをホイホイ引き受けて。面倒ごとにすぐ首を突っ込んで。

大人しくしてれば美人なくせに、モテる為にはどうするべきか、なんて事を大真面目に研究しては大失敗して。

その都度尻拭いをしたり、合コンで大失敗を演じる度に慰め役を務めたり。オレの大学生活はコイツを支える為に費やされたと言ってもいいぐらいだ。

周囲もいつの間にか、アイツの事はオレに任せておけばいいみたいな感じになって。彼氏というより漫才の相方のようなポジションだと思われてたような気がする。

気付かないうちに参加してた合コンの翌日はたいてい「カミさんまた荒れてるぞ、しっかり抑えておけよ」なんてからかわれたっけか。そんなのじゃないっての。

……いや、白状しよう。「そんなの」を期待してたんだ、こっちとしては。

そう。今は、こうして側にいればいい。気持ちを伝えなくてもいいとか、そういう意味じゃない。焦る必要はないと思っていただけだ。こいつの面倒なんて、オレぐらいにしか見られないだろうって。

いくらこいつが鈍くったって、そのうち気が付くはずだ。自分にはオレがいるんだって。その時を楽しみに待っていればいいのだと。

………そうだよ、オレが馬鹿だったんだ。そんなよくある話が通用するような、平凡なやつじゃなかった。

大学生最後の秋。お前そろそろ進路決めなきゃマズイぞ、なんて話しかけた時。

百瀬莉緒

…大事な話があるの。聞いてもらえる?

……そりゃ、あんな表情で言われたら勘違いもするよ。ほんと、残念なやつだ。

そこから先は知っての通り。ここまで人気のアイドルになるとは思ってもみなかったけど。

有名人になった彼女とは、今でも連絡を取ったりたまに会ったりする仲だ。他の連中とも一緒に、だけど。

昔と違う存在になったはずなのに、相変わらず会う度に新しいモテるテクニックとやらを披露したり、合コン開こうだなんて言ってきて。

いつもこれなら大変だろうな。話の中に出てくるプロデューサーとやらには少しだけ同情する。

………まあ、オレからコイツを取っていったバツだと思ってせいぜい苦労してくれ。

………

なーんて。そんな事言う権利、オレには無いんだよな。はあ……

百瀬莉緒

どうしたのよ?せっかく久しぶりに会ったってのに浮かない顔して。何かあったの、皆が来る前に相談に乗ろっか?

百瀬莉緒

あっ、わかった!さては女の子に振られたのね。よーし、今日の飲み会は奢ってあげる。元気出しなさいよ、ね?