無敵の日々
脚本家
ichi_cho_London
投稿日時
2018-06-19 00:32:56

ジュリア

ガキの頃から音楽が、ロックが大好きだった。必ずこれで生きていくんだって心に決めて。

ジュリア

でも、中学卒業と同時に送った書類審査は落選ばかり。当然と言えば当然だけど。

ジュリア

弾き語りしてた時に声掛けられて、名刺貰って。二つ返事で上京したよ、道が見つかったってはしゃいでた。

ジュリア

だけど、何かが違う。ガールズバンドなんて珍しくもないけど、どうしてこんなに大人数なんだ?

ジュリア

面接を受けた時に、メガネの女から言われた言葉は今でも覚えてる。

秋月律子

へえ、ロック好きなの。いいかもしれないわ、ウチも346に負けないような個性的な子を集めなきゃだし。

ジュリア

……ここが芸能事務所でも、アイドル専門だという事を知ったのは、その時だった。

ジュリア

どうせ受からない。いや、受かってたまるか。そう思ったから自己アピールではワザと声張り上げて歌った。こんな事お前らに出来るかって。

ジュリア

なのに、変なオッサンだ。何がティンと来ただよ、こんなアイドルがどこにいる?

ジュリア

契約なんざゴメンだって言うアタシを無理やり引き止めて、拝むように口説いて。

ジュリア

面倒くさくなったから、条件を出した。アタシはアイドルなんて真っ平だ。だから、辞めたくなったらいつでも辞める。

ジュリア

それから馴れ合いはゴメンだ、本名その他を教えるつもりもない。それでもいいって言うんなら契約してやる。どうだ?

ジュリア

……ああ、ボスをナメてたよ。まさか、こんな条件をアッサリ飲むとは夢にも思わなかった。

ジュリア

こうしてアタシはここにやって来たってわけだ。その後のことはまあ、アンタも知っての通りさ。

ジュリア

……けど。今でもたまに、思う時がある。

ジュリア

アンタに声掛けられたあの時に、ここの事をよく調べておけば。ボスが何言おうとひたすら断って、そのまま帰っていたら。

ジュリア

もし、そうしていたらアタシは、今ごろどうなっていたんだろうか。

ジュリア

地元でバンドやってる、ちょっと不良入った高校生…まあ、その辺が妥当だろうな。

ジュリア

でも、どうだろう。ひょっとしたらアンタと同じようにスカウトするやつが現れて、望んでいたロックの世界でデビュー出来てたのかもしれない。

ジュリア

だとしたら、一体どんなバンドだろう。うだつの上がらない三流バンドで明日の飯代にも困っていたのか、

ジュリア

それとも今の音楽シーンに衝撃を与えるような、新進気鋭の若手バンドとして大活躍…ってのは虫が良すぎかな。

ジュリア

………ああ、分かってるよ。選んだのはアタシだ、後悔はしてない。

ジュリア

アイドルの事はまだ良くわかんないし、本名を教える気もないけど、辞めるつもりもないさ。今の所は、だけどね。

ジュリア

一緒に頑張れるいい仲間も、背中を預けられる頼れる相棒も出来て。良かったと思ってる、本当だよ。

ジュリア

だけど………。

ジュリア

…………なあ、プロデューサー。

ジュリア

一つだけ、お願いしたい事があるんだ。聞いてくれるかい?なに、大したことじゃないよ。

ジュリア

アタシのやって来た事は正しかった。そう、言って欲しいんだ。

ジュリア

ああ、変な事言ってるって自覚はあるよ。自分で決めておいて今更何言ってんだってね。

ジュリア

ロックやってる人間が、自分の生き方を誰かに保証してもらいたいだなんて、とんだお笑い草さ。それもよく分かってる。

ジュリア

だけど。それでも、どうしてもアンタに言って欲しいんだ。アタシをここに連れて来てくれたアンタに。

ジュリア

だから…

ジュリア

プロデューサー。もう一度だけ聞くぜ。今度ははっきり答えてくれ、お願いだ。

ジュリア

アタシの選んだ道は、間違いじゃなかった。そうだろう?

ジュリア

……ひとことだけでいい。一言、そう言ってくれさえすれば、それでいいんだ。

ジュリア

それさえ分かれば、アタシは―